股関節のインナーマッスルである腸腰筋を鍛える時は、骨盤の軽い前傾を維持する事が唯一にして最大のポイントというお話です。
目次
腸腰筋は骨盤を立てる筋肉です
解剖の話です。
出典:改訂版 クリニカルマッサージ ー ひと目でわかる筋解剖学と触診・治療の基本テクニック
腸腰筋とは大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉の総称です。
腸骨筋は大腿骨の内側(小転子)と骨盤についています。
大腰筋と小腰筋は内側(小転子)と腰椎の横(横突起)についています。
見ての通り、身体の中心部にある筋肉で、股関節のインナーマッスルです。
この腸腰筋は股関節を前に上げる働き(もも上げ)や、骨盤を前傾させる(骨盤を立てる)働きがあります。骨盤前傾を維持する時に活躍する筋肉です。
また、大腰筋については腰椎を前彎(腰を反る事)させる働きがあります。この筋肉は背骨(腰椎)そのものについているため、腰の動きに大きく影響します。
腸腰筋(特に大腰筋)が短縮(過度に硬くなる)すると、骨盤が過度に前傾して反り腰になります。
なぜ骨盤の軽い前傾(骨盤を立てる)を維持する必要があるのか
骨盤を立てるためには腸腰筋が働く必要があります。
逆に言うと、骨盤を寝かせた状態ではほとんど腸腰筋が働かない姿勢となります。
猫背のように骨盤を後傾している時(骨盤を寝かせている状態)は、大腰筋がリラックスしている状態です。
腸腰筋がほとんど働かない状態で運動やトレーニングをしてもあまり効果がでません。結果として他の筋肉(アウターマッスル)で代償してしまい、筋肉のアンバランスが生まれてしまいます。これはさらなる姿勢の悪化や腰痛の原因にもなります。
なので、腸腰筋(特に大腰筋)を鍛えたい時には骨盤に注意しましょう
骨盤を立てる事と腰を反る事は違う
骨盤を立てる意識を強く持つあまり、腰(腰椎)の反り過ぎになってしまう事があります。これは腰痛を招いてしまうため注意が必要です。
腰の反りを強くするのではなく、あくまで骨盤を立てるだけです。
※骨盤を立てると腰椎も前彎(腰が反る)してしまうのですが、自然に前彎する分には良いのです。腰を反る事で骨盤を立てようとする意識が良くないんです。ダンスなど競技によっては必要な動きかもしれませんが、特別な動きを要求されない限り、腰の反りを強くする意識は良くないと考えます。
これは感覚的に難しいですが、腰を反るより、身体の軸を伸ばすという意識が必要です。
胸を張って肩を落として頭のてっぺんを天井に向かって伸ばすように意識すると自然と骨盤の軽い前傾がつくれると思います。
軽い骨盤前傾位でランニングするだけで腸腰筋はしっかりと働く
日常生活において、腸腰筋は歩く時やランニング時のけり出しでよく使われます。
そのため、骨盤を立てて股関節を大きく使ってランニングするだけで、腸腰筋は鍛えられます。
※腸腰筋はインナーマッスルのため、個別に働かせるという事はほとんど出来ません。だから、鍛える時は関係するアウターマッスルも一緒に鍛える事になります。
腸腰筋を個別に鍛えたいならランジがおすすめ。その時の注意点
個別に鍛える事は難しいのですが、腸腰筋にスポットを当てたい時はランジをおススメします。ランジには数種類ありますが、今回はフロントランジをやります。
こんなイメージです。
文字で説明すると
1 ー 片足を前に出します(スタートポジション)。
2 ー 5秒かけて腰をゆっくり落としていきます。この時両足に体重が掛かるようにします。骨盤は軽度前傾を維持したままです。
3 ー 今度は5秒かけてゆっくり腰を上げていきます。負荷をかけるため、5秒かけてゆっくり動く事と完全に膝を伸ばし切らないようにするのがおすすめです(スロートレーニング)。
参考:スロートレーニングという筋トレの効果とやり方を解説します
※ちなみに後ろ脚の腸腰筋を鍛えている事になります。前足は大殿筋やハムストリングス、大腿四頭筋を使う事になります。
前足を大きく前に出すと、前足の大殿筋やハムストリングスへの負荷量が増えます。殿筋やハムを鍛えたい時は大きく足を出しましょう。
もし、骨盤が寝ていても後ろ脚にしっかりと負荷が掛かるように感じると思いますが、これは腸腰筋ではなく、大腿直筋(ふとももの前の筋肉)が主に働いています。
腰を落とす時は腸腰筋を伸ばしながら収縮(遠心性収縮と言います)させており、歩く時やランニング時のけり出しの使い方と同じになるため歩幅の向上などに役立ちます。
腸腰筋の鍛え方2(豆知識的なやつ)
体力の衰えた高齢者や、骨折後のリハビリとしてSLRという運動が処方される事があります。これは仰向けで寝た状態で、膝を伸ばしたまま股関節を上げていくという方法です。筋力に応じて足首に重りをつければ良い筋力練習になります。この時は腰を反らせてはいけません
ちょっと難しい話になりますが、このSLRという運動は、歩く時や走る時の腸腰筋の使い方とは少し異なります。SLRは開放性運動といって、ボールを蹴る時と同じ使い方になります。この話もまとめる機会があれば今後まとめたいと思います。
まとめ
- 腸腰筋は骨盤前傾を維持したり、ももを上げる時などに働くインナーマッスル
- 腸腰筋は歩く動作やランニングでは、けり出しの時に使われる。ただし骨盤の軽度前傾を維持する事が条件。猫背はダメ
- 腸腰筋は骨盤立てて走るだけで鍛えられる
- 個別に強化したい場合はランジがおススメ。ただし、骨盤を立てる事に注意。
- 骨盤を立てる時は、腰をそるより身体の軸を伸ばす意識が大切
以上です
コメントを残す