今回は筋肉の繊維である速筋と遅筋の違いと割合について説明します。
筋肉は速筋と遅筋の2種類に大別されますが、厳密にいうと速筋は酸化型と解糖型の2つに分かれるため3種となります。
目次
遅筋、速筋とは何か
速筋と遅筋は一つの筋肉の中に含まれている繊維の事です。
例えば、大腿直筋という筋肉=赤筋という訳ではなく、大腿直筋という筋肉を構成している繊維が速筋70%、遅筋30%というイメージです(この比率は筋や個人差で異なります)。
で、片方の割合が55%を超えた場合に○○優位の筋と呼びます。ちなみに大腿直筋の場合は、速筋の割合が多いので、速筋優位の筋肉です。
基本的に、体の内側にある筋肉(インナーマッスル)は遅筋優位の筋肉となります。
逆に身体の表面にある筋肉(アウターマッスル)は速筋優位の筋肉が多いです。
インナーマッスルは、姿勢を保持したり関節を安定させるための筋肉となるため、長時間の収縮に耐えられるように遅筋優位となっています。
アウターマッスルは瞬発的な力を発揮できるように速筋優位となっています。
遅筋と速筋の違い
遅筋(typeⅠ)
- 赤筋(赤く見える事から)やtypeⅠ繊維とも呼ばれる
- エネルギーとして脂質が多く使われる(ただ脂質を燃焼するためには糖が必要です)
- 有酸素運動で多く使われる繊維
- 姿勢保持で多く活躍する繊維
- 体表より中心部に多い
有酸素運動で脂肪を消費するために重要な筋肉です。姿勢保持やバランスとったりする際には超重要。イメージ的にはインナーマッスル(コアとか深層筋とも呼ばれる)に多く含まれる。
速筋(typeⅡb または解糖型)
- 白筋(白く見える事から)やtypeⅡb繊維とも呼ばれる
- エネルギーとして糖が使われる
- 無酸素運動で良く使われる
- 遅筋と比べ瞬間的に大きな力、スピードを生み出せる
- 体表に近い部分に多い
力やスピードが大きいため瞬発的な動作で使われる。酸素を必要としないが直ぐにガス欠を起こす。マッチョな人は速筋が肥大している。イメージ的にはアウターマッスルに多く含まれる。
速筋(typeⅡa または酸化型)
- 遅筋と速筋の中間の性質
表にするとこんな感じ
遅筋(typeⅠ) | 速筋(typeⅡa) | 速筋(typeⅡb) | |
疲労 | 疲労しにくい | 中間 | 疲労しやすい |
収縮速度 | 遅い | 速い | 速い |
ミトコンドリア | 多い | 多い | 少ない |
グリコーゲン | 少ない | 中間 | 多い |
中性脂肪 | 高い | 中間 | 少ない |
毛細血管の数 | 多い | 多い | 少ない |
筋繊維の直径 | 小さい | 中間 | 大きい |
※ミトコンドリアが多いという事は酸素をより多く使うという事です。
※グリコーゲンは糖(炭水化物)の事です。グリコーゲンをエネルギーとする場合は酸素を必要としないため無酸素運動の時には糖を多く使う
速筋と遅筋の割合はトレーニングで変えられるのか
現時点ではまだ研究段階であるというのが結論ですが、いくつか分かっている事を書くと
- 速筋と遅筋の割合は遺伝的な要因で決まっている可能性が高い
- 遅筋繊維を速筋繊維に変えていく事は難しい
- 速筋繊維は性質が変わる(速筋Ⅱb ⇒ 速筋Ⅱa)
速筋の割合を増やしたいと考えても、残念ながらトレーニングでは難しいと言えます。
ただ、速筋の割合を増やす事は出来なくても絶対的な速筋の筋量を増やす事は出来ます。
速筋と遅筋の萎縮について
廃用性の萎縮は遅筋の方が大きい
NASAのラットを用いた研究で、2週間の除重力下では遅筋が著名に衰え、速筋は僅かに衰えたという。つまり寝たきりなど重力に抗して活動していないと、遅筋は衰えが早いと言える。
遅筋に関しては活動的な方でも不良姿勢などで使用しない筋肉が出てくると部分的に廃用性の萎縮が起きやすいです。部分的に弱くなった箇所を他で補おうとすると局所への負担が増えて痛みや疲労に繋がり易くなります。
老化に伴う萎縮は速筋の方が大きい
60歳以上の高齢では、筋によって異なるが全般的に速筋の衰えが大きい。ただ、筋力トレーニングで萎縮を抑えたり、肥大させる事は可能。
まとめ
- 筋肉の構成する繊維として遅筋と速筋がある
- 速筋は無酸素運動、遅筋は有酸素運動で多く使われる
- 速筋は力やスピードが大きく、瞬発的な動きで使われる。
- 遅筋は姿勢保持など長時間の収縮に優れている。
- トレーニングで遅筋を速筋に変える事は難しい。速筋は性質が変わる(速筋Ⅱb ⇒ 速筋Ⅱa)
この記事はここまでです。
参考書籍
運動療法学 総論 第3版、奈良 勲(監修):㈱医学書院,2010.
基礎運動学 第6版、中村隆一(著):医歯薬出版㈱,2009.
理学療法のための筋の基礎知識 猪俣 高史:埼玉理学療法11:2-11,2004.
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