今回は腰痛エクササイズの王道とも呼べるマッケンジー体操のやり方について紹介します。
このマッケンジー体操とは非特異的腰痛の急性期(発症~4週までの間)で特に有効とされています(理学療法ガイドライン)。また、慢性期でも腰痛緩和に効果がある事も報告されています。
ちなみに非特異的腰痛(原因のはっきりしない腰痛)は実に腰痛全体の85%となり、ほとんどの腰痛持ちの方に適応しています。
この非特異的腰痛の原因として細かい筋肉なり靭帯なりを特定するのは困難ですが、痛みの軽くなる動きの傾向をつかめば(腰を曲げて楽になる、反って楽になるなど)、適したエクササイズを選択する事は可能です。結果、早期に痛みを軽減させる事に繋がります。
厳密には評価を含めた治療法になるんですが、難しくなるため体操の方法を中心に記載します。
なお、足の感覚マヒなど重篤な症状が出ている方や、安静時でも激痛が治まらない方、不安な方は、まず整形外科を受診してレントゲンやMRIを取ってもらい医師の判断を聞いた後に実施する事をお勧めします。
※また、あまり変化がない、悪化しているという方は速やかに体操を中止してください。
参考として国際マッケンジー協会日本支部のリンクを貼ります。認定セラピストの在籍している施設など載っています。質の高い評価や適したエクササイズの指導など受けられる事と思います。
目次
マッケンジー体操のルーツ
1956年、ニューヨークの理学療法士ロビン・マッケンジーさんが発案した体操です。この当時、腰痛の体操は反る動作がNGで、ウィリアムズ体操という腹筋を鍛えて背中を丸める体操が主流でした。このマッケンジーさんは中々改善しない腰痛患者さんにベッドで寝て待っているように指示したそうです。数分後、マッケンジーさんが帰ってくると、患者さんがうつ伏せになって寝ていました(腰椎が前彎する姿勢で、腰を反るような状態)。驚いたマッケンジーさんですが、患者さんはすごく楽になったと言うのです
マッケンジー体操の発見は偶然だった
当時は禁忌とされてきた姿勢ですが、取り合えず楽だと言うので腰を反った状態で治療を進めると、長い間改善しなかった腰痛が治ったという事がマッケンジー体操の始まりです。その後、研究を重ねて症状別に適した体操を行うと良いことが分かってきました。この時代から現代に至るまで多くの実績を残してきた腰痛体操となっています。
マッケンジーによる痛みの発生の考え方
そもそも背骨はS字になっている事で、重い重量を支えたり、足からの衝撃を吸収したりしている。これを腰椎の前彎と言うが、この前彎がなくなる動作を繰り返したり長時間続ける事で、腰の軟部組織(靭帯や関節包など)が引き伸ばされ痛みが起きていると考えられている。
マッケンジー体操の目的
背筋を鍛えるためのものではなく、背骨の関節や周囲の組織(靭帯や関節包など)の状態を改善する事が目的となる
痛みを減らし、腰の動きを正常に近づける
どの動きや姿勢で痛みが出るのか判断できるので、日常生活でどのような動きを避ければ良いかが分かる
※マッケンジー体操は筋トレではありません。柔軟性の体操だと思って下さい
マッケンジー体操のやり方
マッケンジー体操は大きく前屈体操と後屈体操の2つのタイプに分けられます。
基本的にはどちらかを主体にするかを決めていきますが、まずは両方行ってみて痛みがどう変化するかを感じてもらう方が良いです。痛みが楽になっている方を続けてみて下さい
いずれのエクササイズも出来るだけ身体の力を抜いてリラックスする事が最も重要です。
※前屈体操については腰椎椎間板ヘルニアの急性期は禁止されています。腰を曲げる方向に力が加わる事で、足のしびれなどの神経症状が出る可能性があるからです
後屈体操
マッケンジー,後屈レベル1
- うつ伏せで顔は左右どちらかに向ける
- 深呼吸し、全身の力を抜いてリラックスして2~3分
- 1日6~8セットが目安
- 肘を立てて、肘で上半身の重さを支える(肘を内側に入れると身体を支えやすい)
- 深呼吸し、腰から下は力を抜いてリラックス。2~3分姿勢を保つ
- 1日6~8セットが目安
- 両手の力で身体を起していきます。
- 肘を完全に伸ばし身体を支えます(肩甲骨で体重を受ける感覚です)深呼吸し、腰から下は力を抜いてリラックス。数秒間、姿勢を保ち、またうつ伏せに戻ります。
- 1日6~8セットが目安
※痛い時はレベル2までにしておいて下さい
前屈体操
- あおむけになって両ひざを立てる。
- 膝を抱えて丸め込む(図の姿勢)
- 痛みのない範囲で2~3秒保ち、足をおろして1の姿勢に戻る
- 以上を5~6回繰り返す
- 椅子に座る。
- 上半身を前にたおして両手で床をさわる(図の姿勢)
- 床に触ったら上半身を起こす
- 以上を5~6回繰り返す(回数を重ねるごとに徐々に動きを大きく曲げるようにします)
エクササイズのタイプ別の判断(重要)
正しい方向に運動しているのであれば
- 痛みが徐々に軽くなる
- 腰の動く範囲が増える
- 痛みが腰の中央部に近くなる
といった自覚症状が出てきます。
短時間、短期間の内に改善がみられる時は数日継続してください
反対に間違った方向に運動しているのであれば
- 痛みが強くなる
- 腰の動く範囲が狭くなる
- 痛みが腰の中央部から遠くなっていく
といった自覚症状がでます。
この時は中止してください
エクササイズの注意点
- 痛みが出ないギリギリの範囲、もしくは軽ーい痛みが出る程度までは腰を動かす必要がある
- 腰の筋肉は脱力する事が大切
- 足のしびれが出るなど悪化していると感じた場合は速やかに中止しましょう
まとめ
- マッケンジー体操について紹介しました
- マッケンジー体操は現代でも主流の腰痛エクササイズとなっている
- 大きく後屈体操と伸展体操に分けられる
- 自覚的に改善している動きを選ぶのが良い
- エクササイズは痛みが出ない範囲で行い、腰の筋肉を脱力する事がすごく大切
しっかりとした評価、指導を受けたい方は認定セラピストのいる施設に相談すると良いと思います。参考までに
という訳でここまで
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