腰痛のガイドラインの話

腰,痛い

この記事は厚生労働省から発行されている腰痛診療ガイドライン2012年を参考に、腰が痛くなった時にどうするかを分かりやすく書いたつもりです。

ガイドラインは数多くの文献や報告から成り立っているため科学的根拠は強く、現在の医療における一般的な方針が書かれています。ただ、それゆえにおおまかな結論が多く、個々人の悩みに対応した内容とは言い難いです。「それじゃ役に立たない」と言われそうですが、信頼性は高く、まず基本となる考え方です。この基本的な考えをおさえた上で自らの行動を選択するのが良いかと思います。

以下に伝えたい事を抜粋します。若干表現が変わっているところもあるので気になる人はガイドラインを読んでね。

目次

特異的腰痛と非特異的腰痛

・特異的腰痛・・原因が明らかなもの(腰痛の15%)

・非特異的腰痛・・原因が明らかでないもの(腰痛の85%)

原因がはっきりしないものが多いという事です。ちなみに特異的腰痛では「腫瘍」「感染」「外傷」の3つが重要と書かれています。まず痛くなったら病院というのは、自然経過で改善の見込みが薄い特異的な腰痛を判別するために重要と考えます。


非特異的腰痛の安静は良くない

・急性の痛みであってもなるべく普段の活動を維持する事は早い痛みの改善や休業期間の短縮になる

・急性の痛みでも普段の活動を維持した群とベッド上安静にしていた群では1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後の痛みの程度に差がない

つまり原因がハッキリしない腰痛は出来る範囲で動きましょうという事です。この出来る範囲でというのが大事で、耐えられない程の痛みをおしてまで無理をしてはいかんという事です。2、3日は無理出来ないと思うので、最初は腰を捻らないように気をつけながら布団の上で丸太のように転がるだけでも十分だと思います。

ちなみに発症から4週間未満が急性腰痛

4週間以上3ヶ月未満が亜急性期腰痛

3ヶ月以上が慢性腰痛

と定義されてます。

腰痛に薬物療法(痛み止めの薬)は有効

有効とされている薬の種類は決まっているのですが、ここでは説明は割愛します。腰が痛いと言ってお医者さんにかかれば、まず有効とされている痛み止めを出してくれるでしょう。ここら辺は個人の判断で決めない方が良いと思われます。

急性腰痛に温熱療法は短期的には有効

・急性腰痛は温めたほうが何もしないよりも早期の痛みの軽減や機能回復につながる

・慢性腰痛には温めても改善するといった根拠は薄い

・寒冷療法(冷やす事)については質の高いエビデンス(科学的根拠)はない

良く温めたほうが良いか冷やすのが良いのかという話を聞きます。捻挫など急性の痛みには冷やすのは炎症を抑えるため有効とされていますが、腰痛に関しては急性期でも冷やした方が良いとは言えないのが現状です。

ただ、私個人の見解としては冷やしても楽になると感じるのであればそれで良いと思います。冷やす事は良いとも悪いとも言えないため、楽に感じる方を選択して下さいとなります。でも最初は温めてみて心地よければ敢えてチャレンジして冷やさなくても良いと思います。

 物理療法は有効と言える根拠は薄い

物理療法とは腰椎を引っ張ったり(牽引療法)、電気刺激を加えたりするやつです。ちなみにこれらは長期的には有効とは言えないとなっていますが、施行直後は疼痛の軽減に有効とされています。良いか悪いかは一定の結論に至っていないというところです。

腰痛コルセットは腰痛の機能改善には有効

・痛みを改善させる効果はない

・機能改善に有効

痛みを改善させる効果というのは、ずっとコルセットを巻いてた人が、コルセットを外した時に感じる痛みの程度という意味です。コルセットを巻いてる間は痛みが軽減されるので結果として活動量が上がる(機能改善に有効)といったところです。

だから、痛みで活動が制限されるなら、コルセットを使い活動量を維持して、時間経過と共に痛みが軽くなってきたらコルセットはなるべく使用しない方が良い(体幹の筋力低下予防のため)というのが私の結論です。

慢性腰痛には運動療法(ストレッチ、筋力トレなど)は有効

・急性腰痛(4週未満)には運動療法は痛みの軽減に有効ではない

・亜急性期(4週~3ヶ月未満)には運動療法の痛みの軽減に対する効果が限定的

・慢性期(3ヶ月以上)にはとても有効

・最適な運動の種類、強度、頻度、期間については明らかではない

ここで言っている運動療法とは+αの運動という事です。急性腰痛に運動療法では痛みが軽減しないからといって、ただ安静にすれば良いという意味ではないです。「これをやっていれば良くなりますよ」っていうものは明らかにされていないって事で、動ける範囲で動いた方が早期の痛みの軽減や機能回復につながります。

また、運動の種類による効果の差が明らかでないとガイドラインでは書かれていますが、私は非特異的腰痛は個々人で痛みの原因や状態が異なるため一括りに出来ないと考えます。

同一なプログラムを行っても、ある人は良くなった、ある人は変わらないという事になるため、結果として効果に差はないとなります。現在は、パターンに分けて(腰曲げて痛い、伸ばして痛いなど)プログラムを変えて運動を実施した結果、痛みがどうなったかという報告が次々と出てきています。

ただ、現在のところは統一された見解には至っていないようです。

代替療法(徒手療法や鍼治療など)は慢性腰痛に対して長期的には効果があるとは言えない

・徒手療法は短期的な痛みの軽減には効果がある

・鍼治療も正しい手技に従った治療では短期的には痛みの軽減には効果がみられる

徒手療法とはカイロ(ボキボキ鳴らすやつ)や整体、指圧などです。徒手療法には注意が必要で、骨折や麻痺などの重篤な障害を起こす事例もあるためおっかない感じがします。

慰安目的の筋肉の軽いマッサージ程度のところなら弊害も少ないと思われますが、施術者によって知識や技量にかなり差があるというのは間違いないでしょう。

事前にどういう事をするのか聞いて、何となく恐ろしいとか不安だと感じる時は行かない方が良いような気がします。状態が悪化した時に凄く後悔するので。また、基本的に保険が効かないという事もあるため高額になります。

非特異的な(原因のハッキリしない)慢性腰痛に対し認知運動療法は有効

非特異的腰痛に対しては認知運動療法は有効との事。

認知運動療法とは痛みに対する知識を学び、受け取り方を修正してイライラや不安、恐怖などストレスをコントロールしてネガティブな考えをポジティブに変えていこうという、主に心理面に対する療法です。また、学んだ事を日々の行動に反映させる事も含みます。

非特異的な(原因のハッキリしない)慢性腰痛に対し手術(脊椎固定術)と集中的リハビリ(認知運動療法)に効果の差はない

痛みに対してあまり悲観的にならずに、痛みが軽くなる動き方など学んで行動に移せれば手術しなくても良いんじゃないかという事です

ガイドラインにはその他多くの事が書かれていますが、役に立ちそうな事を抜粋してお伝えしました。

おわり

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

日本の北の方に住んでいる30代男性です。 趣味:身体を動かす事。 仕事:医療系。 属性:社畜。 嫌な事でも笑顔で「YES」と答える事で様々な難局を切り抜けてきた経歴を持つ。壁と同化して存在感を消す事で飲み会を一次会で切り上げる特殊技能「ステルス」を備えている。 そんな私は仕事上、身体に関わる事を日々勉強しています。 これまで学んできた事や自身の経験から、出来るだけ役立つ情報を発信すべく立ち上げたブログです。 趣味であり、仕事でもある運動をメインテーマに扱っていきます。 皆様の身体や運動に関する疑問を解決する糸口になれば幸いです。