基本的にランニングで鍛えられる筋肉は全身ですが、フォームや速度によって変わってきます。
この記事ではジョギングなど定常速度でのランニングという観点で着地~けり出しまで使われる筋肉の話をします。
本題に入る前に、ランニングを続けると身体がどのように変化するかという事から話します。
目次
ランニングでムキムキにはならない
まずランニングではムキムキな体形になる事はありません。
普段運動していない方がランニングを始めたら筋肉がついて太くなるんじゃないか?と思う方もいるかもしれませんが、それはありません。どちらかというと細くなります。
その理由は2つです。
- 速筋より遅筋の方を使うから
- 足、腰回りの皮下脂肪、内臓脂肪が落ちるから
1速筋より遅筋を使うから
まず速筋と遅筋と何かって事ですが、1つの筋肉を構成する成分になります。遅筋は姿勢保持などで使われインナーマッスルに多い。速筋は瞬発系の筋肉でアウターマッスルに多い、ムキムキの筋となります。
例えば大腿直筋という太もも前の筋肉は、大体速筋65%、遅筋35%という構成比になっており速筋優位の筋肉となります。
で、運動負荷量が低い時は、大腿直筋の中の遅筋繊維から活動を始めます。遅筋だけでは耐えられない負荷量になった時に、はじめて速筋が活動するという仕組みになっています。
何も運動をしていない人が走り始めると数週間で筋肉がつきます。走り始めは筋肉がないので速筋と遅筋が両方つきますが、 少し続けると全体の筋肉量が増えるので遅筋だけで運動が出来るようになります。
そうすると同じ速さでは速筋を使わずに走る事が出来るというわけです。
というか、筋肉を目に見えて太くするためのトレーニングは過酷です。最大筋力の70%以上で追い込まないといけません。どれくらい辛いかっていうと、『下手したらケガするんじゃないか?』と思うくらいの負荷に感じるハズです。
走る程度の負荷ではまずムキムキにはならないです。
2.足、腰回りの皮下脂肪、内臓脂肪が落ちるから
そして2つ目の脂肪が落ちる事で細く見えます。
ただ、皮下脂肪は落ちにくく、特に腰やお尻あたりの皮下脂肪はもっとも落ちにくいです。
順番としては内臓脂肪⇒皮下脂肪という順番で落ちていき、皮下脂肪も四肢の末端(顔、手首、足首周囲)から落ちていきます。お尻や背中、お腹の皮下脂肪は最後の方になります。
いずれにせよ続ける事で細くなります。
一応、過去に書いた関連記事を貼っておきます
関連記事②:有酸素運動を続けると太りやすい体質になるんじゃないかという疑問に答える
ランニングで使う筋肉
さて、本題です。
ランニングで使う筋肉は全身と冒頭で書きましたが、ほとんどウォーキングと同じような部位を使います。ただ、着地の衝撃(ウォーキングの3倍掛かる)が違う事や、フォームによって結構負荷の掛かり方が変わります。
まず着地からいきます。
着地
厳密には足が地面に触れてから体重がグッと掛かる瞬間で、重心のほぼ真下にある事が理想です。
で、はたらく筋肉は下半身ほぼ全てと考えてOKです(書いてない筋肉もあります)。
- お尻の筋肉の大殿筋、中殿筋
- 太ももの前側の大腿四頭筋、大腿筋膜張筋
- 太ももの裏側のハムストリングス
- 内ももの内転筋群(6つの筋肉)
- 足首を反るための前脛骨筋、または足首を伸ばす下腿三頭筋
- 背中の脊柱起立筋
- お腹の腹筋群(腹横筋や外内腹斜筋など)
1~4(太ももや股関節周りの筋肉)はウォーキング同様に股関節や膝関節の衝撃を吸収するために働きます。
6~7も着地の衝撃で腰から上が動揺しないように働きます。ただ、姿勢によって変わります。
走るのが遅い時や、骨盤が後傾(猫背)など重心が後ろにある場合には、下図のように重心よりも前方で荷重する事になります。
前で荷重してしまうと、重心が後ろにあるので足の前側の筋肉に負担が掛かってしまいます。膝が曲がらないように大腿四頭筋が凄くがんばる必要があるなど。
さらに前方で荷重すると、ブレーキを掛ける方向に力が働いてしまうのでロスとなってしまうのです。
一方、真下に荷重が重心の真下に近い場合、前側の筋肉の負担は減ります。
さらにブレーキ方向への反作用もなくなります。
走る速度が速い場合、着地の際に重心が沈み込まないようにお尻の筋肉(股関節伸展筋)や太ももの筋肉(膝関節伸展筋)、下腿三頭筋で足関節を支えます。膝や股関節が極端に曲がらないように大きな筋力で支えるようになります。
つまり速い方が下肢全体の筋肉への負荷は大きくなります。
推進期
正確な名称は分かりませんが、荷重後からけり出しまでの間です。
この時はハムストリングスのはたらきが非常に大きいです。ハムストリングスで股関節を大きく後方に動かします。また、徐々に下腿三頭筋のはたらきも強くなっていきます(遠心性収縮)。
走る時にハムストリングスが大事と言われるのは、この推進する時に主力の筋肉となるからです。
あと当然ながら、股関節から上を安定させるためにお尻の筋肉や、腹筋、背筋なども働いています。
けり出し
けり出しもハムストリングスや下腿三頭筋がはたらきます。ここで、振り出す瞬間に伸ばされた腸腰筋がバネのようにはたらいて足を前に振り出す補助をおこないます。
一応書いておくと、腸腰筋は上半身と骨盤、下半身を連結しており、着地のさいにも働いています。
けり出す際に足首の力(下腿三頭筋)で地面を押す意識を強くすると、足が後ろに残ったり、ふくらはぎの筋疲労が強くなります。短距離の加速期では必須の力だと考えますが、長距離では意識しない方が良いと考えます。
それと図には書いていませんが、けり出しには股関節の内転筋(内もも)もはたらきます。股関節の安定やけり出しの補助をしています。
終わりに
ランニングは全身の筋肉を使いますが、速い方が全身的な負荷は上がります。
ただ、速度が上がってくると身体の後ろ側の筋肉が働き、速度が遅い(または後方重心)だと身体の前側が活発になる傾向があるという話です。
この記事は、文献やら書籍やら自身のランニング経験や運動学の知識をもとに書いていますが、もしかしたら誤りがあるかもしれません。参考程度にとどめておいてください。
以上です。
10kmを48分前後で走っていた時は膝は少し痛むもののふくらはぎは痛くありませんでしたが、46分台で走るようになってからふくらはぎを痛めるようになりました。
痛みが取れるまで休養しては走りを繰り返していますが、ゆっくり走ろうと思いつつ、気づいたらスピードを出していてまたふくらはぎを痛めてしまうという繰り返しになっています。
反時計回りで走っている(左側に回るコース)からか?左ふくらはぎ上部外側が特に痛いです。右足親指の付け根辺りにタコができていますが、左足にはありません。
時計回りに変えればいいのでしょうが、長年の習慣で変えたくないのが本音です。
※ふくらはぎを痛めた週は3回(30km)、その翌週は挽回しようと6回(10km×3回+14km×3回合計72km)走りました。
Q.ふくらはぎ痛をなくすためにはやはり休養するしかないでしょうか?やはり週3-4回にすべきでしょうか?
そうすけ様
返信遅れましたが回答します。
普通は左回りに走ると右側に筋疲労などが起きやすいハズです。左に回るために右のけり出しの力を多く必要とするためです。そのため右足親指のつけ根にタコが出来ているのだと推測します。
一方左ふくらはぎの上部外側痛は、もし筋肉の痛みだとするなら次の2つが可能性として考えられます。
①けり出しで痛い
下腿3頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の影響が一番可能性が高いと思います。ただ、上部外側なのでもしかしたら長短の腓骨筋の可能性もあります。腓骨筋は下腿三頭筋に比べて筋肉は小さいですが、足首を伸ばす作用に加えて外返し(足首を外に向ける)の作用があります。この足首を伸ばしながら外返しをする筋肉は腓骨筋しかありません。もしかしたらスピードを上げた時に重心の位置やけり出し方が変わって腓骨筋への負担が増えているのかもしれません。
対策は安静⇒痛みが落ち着いたらストレッチ⇒走り方のチェック(重心の位置やけり出した時の力の掛かり方)となりますかね。
②荷重時に痛みが出る
可能性としては低いと思いますが、前脛骨筋や長趾伸筋、第3腓骨筋の影響があるかもしれません。これらはすね(前側)の筋肉ですが、特に腓骨筋などはほぼ真横についており、ふくらはぎの痛みと混同している可能性もあります。
対策は上記と同じく安静、ストレッチなどとなります