ランニングフォームで前傾姿勢がダメな理由

ランニングで前傾姿勢がダメな理由

マラソンなど走るフォームは前傾姿勢が良いと言われています。何故なのかずっと疑問です。

正直、前傾姿勢が効率良いとは思えません。一定の速度で走る場合は、上体は重力に対して垂直であるのが理想です。

 

目次

前傾姿勢とは

良く言われているのが、

  • 横から見て足から頭までを一直線にする
  • その姿勢のまま前方に傾く事で前に倒れる力を利用する
  • 結果、自然に足が出る

というものです。

 


前傾姿勢がダメな理由

まず、理想のランニングフォームは余計な力を使っていない状態という事を前提としています。

筋肉は収縮すると酸素を消費します。余計な力みがあると、それだけ貴重な酸素を使っている事になります。

同じ速度で走るなら、力が抜けている方が効率が良いという事です。

前に倒れる力を利用できるのは加速の時だけ

前傾して走るのは加速の時だけです。それ以外で前傾してもバランスをとるために余計な筋収縮が入ってしまいます。

物理的に考えると、前傾する事で前方への回転モーメントが生まれます。この回転モーメントは『重力による前方への加速力』と言えます。

速度が上がる時には前傾する事で力が釣り合っている状態ですが、一定速度の時は前傾すると倒れるだけです。

一定速度を保つときには前方への回転モーメントは必要ではないんです。

 

例えば、止まっているバスの中で垂直に立っている事を想像してください。

このバスが動き始めて徐々に加速する時は真っすぐ立っていると後ろに倒れそうになると思います。この時、バスの加速度に合わせて前傾すると力が釣り合い、それ程力まずに立っていられます。

ここで、バスが一定速度になったら身体を垂直にしないと立っていられません。前傾では前に倒れるか、バランスをとるため余計な力を使っている事になります。

一定速度の時は加速度は0になるので、身体を傾ける事は非効率的なんです。

 

ランニングでも一緒です。時速10kmの一定速度で走っている時に、身体を前方に傾けるとどうなると思いますか?

前方に倒れないように腰背部の筋肉群に余計な筋収縮が入るだけです。

 

前傾によって無意識に足が出るけど疲れないわけではない

あと、前傾する事で自然に足が前に出るという話ですが、これはステップ反応と呼ばれるもので、人間がバランスを崩しそうになった時に起きる姿勢制御の一つです。

残念ながら、ステップ反応が出る時も筋収縮は起きています。

姿勢制御により意識しないでも足は前に出ますが、疲れにくいという事はないハズです。

 

もう一点。

前傾を強く意識すると、上半身が前に傾いて股関節が屈曲した姿勢になりやすいです。

股関節の屈曲位は足が前に出にくい姿勢です。

もともと股関節が屈曲している姿勢で、足を前方に出すためさらに屈曲するわけですから、より力を使います。

とても効率が良いとは思えません。

 

理想のフォーム

じゃあ理想のフォームって何なんだっていう事になりますが、一定速度のとき上半身は垂直が良いという事です(坂道は除く)。

さらに言うと、軸を伸ばした(上に伸びるイメージ)姿勢が良いです。軸は伸びているけど背中や肩の力が程よく抜けている姿勢が理想と考えます。

胸を張るのではなく、『上に伸びる』です。

コツは下っ腹を意識してお腹に軽く力を入れる事です(腹圧をかける)

ただ、向かい風が強い時は垂直よりもやや前方に倒す方が良いです。

その方が力のつり合いがとれて、背中や腰に余計な筋収縮が入らないです。

速いマラソン選手の動きを見ると、私には上半身が前傾しているようには見えません。ほぼ地面と垂直です。また、短距離でも加速し終わって一定速度になった時は上半身が地面とほぼ垂直になっています。

無駄を省いた結果、垂直になったのでしょう。

トレーニング・ジャーナルのある記事

『トレーニング・ジャーナル2018/4、Vol40 マラソンの効率における練習ー最適な練習方法の選択』の記事で、骨盤の前後傾について書かれていました。それによると

『身体を前に傾けるほど地面を強く蹴れるのでスピードは出る。一方、後方に傾けると股関節の可動域が上がるため足が上がり易く、タイムロスなく歩幅を維持できる。』との事。

要は前傾するとスピードは出るが力のロスがあり、どちらも一長一短という内容でした。

この記事をみて改めて無理に骨盤を傾けたりする必要はないのじゃないかと思うわけですよ。その時の筋力や求めるスピードによって変わってくるでしょうが、基本的には無意識にスピードについていこうとすれば最適なフォームを選択するんじゃないかと。

終わりに

前傾姿勢について書きましたが、個人的な見解のため反対の方も多いと思います。

もちろん、前傾によって記録を伸ばした方もいるでしょうし、全面的に否定する事は出来ません。

ただ、皆がやっているからとか、あのコーチが言っているからという理由で無理に前傾しなくても良いという事が言いたかったんです。

大切なのは自分の身体の声を聴いて判断するべきだという事です。

ちなみに私は、自身の経験や物理的な側面から、強い前傾意識はデメリットしかなく、軸を伸ばす(上に伸びるイメージ)意識の方が大切だと考えています。

 

以上です。

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ABOUTこの記事をかいた人

日本の北の方に住んでいる30代男性です。 趣味:身体を動かす事。 仕事:医療系。 属性:社畜。 嫌な事でも笑顔で「YES」と答える事で様々な難局を切り抜けてきた経歴を持つ。壁と同化して存在感を消す事で飲み会を一次会で切り上げる特殊技能「ステルス」を備えている。 そんな私は仕事上、身体に関わる事を日々勉強しています。 これまで学んできた事や自身の経験から、出来るだけ役立つ情報を発信すべく立ち上げたブログです。 趣味であり、仕事でもある運動をメインテーマに扱っていきます。 皆様の身体や運動に関する疑問を解決する糸口になれば幸いです。