全身の持久力(=有酸素能力)はつまるところ、どれだけ体中に血液を回せるか、どれだけ筋肉内で酸素を取り込めるかにかかっています。
そして、負荷の高い全身運動である程に効率よく鍛えられますが、ほどほどの負荷でも向上します。
よく最大心拍数(220-年齢)の90%以上の負荷でないと向上しないという話を聞きますが、それは己の限界に挑戦してガシガシ鍛えている人の話であって、僕ら一般人はとにかく運動を続けていれば向上します。
それを説明するために最大酸素摂取量(Vo2Max)を運動学の観点からみていきます。
※Vo2Maxは全身持久力を数値であらわしたものと考えて下さい。
参考:最大酸素摂取量(Vo2Max)の基準値と測定方法について
目次
Vo2Maxはどう決まる?
まずVo2Maxは
- 肺でどれくらいの酸素を取り込めるか(呼吸器系)
- 血流に乗せてどれ位の酸素を運べるか(循環器系)
- 運んだ酸素を筋肉でどれ程効率的に利用できるか
の3点で決まります。
この内、トレーニングによって大きく鍛えられるのは2と3になります。
1の呼吸器系は元々予備能力が大きく、普段運動していない人でも激しい運動時には酸素を大量に取り込む事が出来るためトレーニングによる恩恵はそれ程ありません。
言葉から想像するとどれだけ大量に空気を吸えるかというイメージがつきそうですが、実際には2.3の循環器系と酸素利用効率が大きく影響しています。
つまり血液をたくさん循環出来る事と筋肉内にどれだけ酸素を取り込めるかで決まります。
これを式で書くと
酸素摂取量=心拍数 × 1回拍出量 × 動静脈血酸素較差(筋肉での酸素利用効率のこと) [フィックの原理]となります。
全身持久力の向上とは血流量を増やし、筋肉内での酸素利用効率を良くする事
血流量が増える機序
軽い負荷でも運動を習慣にしていると、手足などの血管が柔らかくなり、よく使う筋肉に小さい血管が増えます。
そのため血液が流れやすくなります。
つまり、心臓が血液を送り出す力は同じでも、全身にいきわたる血液量は増えるという事です。
全身に流れる血液が増えると、心臓に帰ってくる血液も増えるため、結果として心臓1回の収縮で流れる血液量は増加します。
1回拍出量は、心臓(心筋)の収縮力と心臓の拡張性が高い方が多くなりますが、通常、心筋の収縮力そのものは数カ月程度の短期間では変化が期待しにくいです。
筋肉での酸素利用効率が良くなる機序
血液は心臓⇒全身⇒心臓⇒肺⇒心臓と流れます。
そして全身から帰ってくる血液に酸素が少ない程、肺で取りこめる酸素量が増えるためVo2Maxは高まります。
トレーニングによって筋内の小さい血管が増える事やミトコンドリアの数や大きさが増える事、遅筋繊維の増大などにより筋肉内で酸素が多く利用される事になります。すると血液量は同じでも肺で取り込める酸素量は増えるという事です。
全身持久力向上のための負荷量
じゃあどの位のトレーニング負荷ならVo2Maxは向上するのかという話ですが、そこそこの速度で走り続けていればVo2Maxは増えます。
理由は前述したように血管が柔らかくなる事や筋内の小さい血管が増える事などです。
こんなイメージです。
高い負荷量の方が効率が良い事は間違いないですが、中等度の負荷でも向上します。
ただ、ある程度トレーニングを続けている人は別です。元々毛細血管が発達していたりミトコンドリアが多い人にとっては現状維持程度にしかならないからです。
おススメ負荷量
つまり、最初は楽に走れる程度の運動を続けて『血管を柔らかく』『小さい血管を増やし』『ミトコンドリアを増やす』という機序でVo2Maxを向上するのが良い、という事です。
あんまり伸びてないなって思った時に強度を少し上げてさらに上をめざすのが無理なく鍛える方法です。
そして、最終的には最大心拍数(220-年齢)の90%以上でのトレーニング強度まで上げるのが良いとされていますが、これも続けていればいずれ頭打ちとなります。
Vo2Maxは鍛えてもある程度のところで伸びなくなりますが、そのレベルまでトレーニングを続ける人は一般ではほとんどいないでしょう。こんな記事を書いてる私も全然未達です。
メニューを組む時は軽いジョグ(ATレベル)をメインにして、週に1~2回のインターバルを入れると効率が良いというのはその通りだと思いますが、インターバルはめちゃキツイので走り始めの方にはあまりおススメしません。
まずは続けられる強度で続けるのが一番です。
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